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 父に優しくされて無性に切ないというような夢をみて起きると泣いていた。朝食にキャベツを酢につけて食べた。毛布を押し入れにしまって、そこで遠くに行った友達が昔にくれたさまざまな虫の標本を見つけた。積み上げた箱はなだれていて留められた虫は崩れていた。このあいだの地震でだろうかって、箱を全部押し入れから出した。クリスマスツリーなんかを収納したいと思う余白ができてそこには当然猫が収まった。
 ベランダでごみ袋に虫を捨てた。オレンジ色した蝶の羽根は枯れ葉と同じ散り方をした。粉々になったモルフォ蝶は割れたアルミのようだった。虫を捨てる午後のはじまり、ベランダの柵に柔らかなものが滞っているのを見る。隣の部屋のテレビからF1カーが走る天文学的な音が聞こえていて、そのうちに猫が保護者みたいな顔をして餌をねだりにやってきた。猫はキャベツを食べないのだった。飼っていた魚にセナという名前をつけていたことがあった。アイルトン・セナという名前は世界で一番かっこいい名前だと思った。セナが夭折したみたいに魚もすぐに死んでしまった。薬品じみて真っ青な魚だった。その色ったらなかった。
 私たちにできることはただ、私たちの生活を美しく耕すことだけなのだと、誰かが言っていた。生活の在りかを知らないならば美しくできる土地はないのだろう。私はベランダの柵に寄りかかりながら風に少し飛ばされていく虫の死骸の横にあって、そこはどこでもよいのだった。耕されるためばかりにあるのではないだろう、土地も。世界の代わりに醜くなるような無血の英雄が空に煙る。その英雄はスープなんかに降りかかり繊細な料理をジャンクフーズに変えていき、安っぽい私の味覚をうっとりさせてしまうのだ。かなしくなるのは、それらを残らず吐き出すための時間さえまた満足にあるのだろうということだった。私は今や、耐え切りたいのだ。
 いつだったかひとのつく嘘がわかるのが嫌だったことを思い出していた。お姉さんとおじさんと、あの子とこの子と私の嘘。ママと私と先生の嘘。それが思い違いでも卑しさでも。ベランダからは鉄塔が見えた。想像を絶して晴れていた。冷まされて無音の絶大な空だった。いまなお私はすべてのものに騙されている。隣の部屋のテレビから天気予報が聞こえてくるのをなにとはなしに待っている。
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lic | URL | 2011-05-09-Mon 23:01 [編集]
こういうことはメールで言うべきなのでしょうけど また読める様になってよかったです
僕にとっては勉強になっています ありがとう
藤野 | URL | 2011-05-23-Mon 01:20 [編集]
うわーん。ありがとうございます。うわーん!

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