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 「きみってもしかして人見知り?」って聞かれて、はい、そうですって答えて、あなたはもしかして人見知りじゃないんですかって、聞きたかったけど、人見知りだから聞けなかった。

***

 叔父を訪ねた。濃いお茶を淹れて、眠ったり起きたりしながら、一日や二日碁ばかり打って過ごした。こんなことするの久しぶりだと思った。「きみは本当にめきめき弱くなっていくね」と言われて、盤上を見たらうってがえしされてた。強いときなんてあったかしらと思った。昔から、ときどきこうして過ごしたけれど、私は叔父を碁盤越しに見ながら、なんとなく雰囲気を読むように石を置いていくだけだった。雰囲気を、いつも読み違えるのだし。
 繋がっていそうで繋がっていない私の石を叔父がばちんと切るときの、あの、あ、切られた、っていう感覚は、どことなくなにかに似ているのだけれど、なんだろうって、いつも不思議に思う。碁石が丸いせいでいくら並べてもそこには空白ができるから、戦線はいつもやわらかく滲んで見えて、それでもその形に目が馴染んでしまったので、石が死ぬのがわかってしまう、そして無傷の肉体が残る、あの感じ。お弁当をつくって、洗濯物を干して、干している途中で眠たくなって寝転がって、時間になって、ああ遅刻だよと思いながら鞄に教科書放り込んで、ローファー履いて、薄暗い玄関口でブレザーのボタンが取れているのに気づいた瞬間の、あ、もうだめだ、っていう感じ。そういう日を思い出す。戦線はいつもやわらかく滲んで見えて、だけど頭で死ぬのがわかる、あの玄関の暗さみたいな。そういう日の匂いがするから、ふいに驚く。
 足の裏を凍らせたタオルで冷やしていたら、叔父にどうかしたのかと聞かれた。出がけにアイロン踏んづけちゃって、って言ったら叔父は、きみはますますだめになっていくねと言って、笑ってくれた。

***

 やっぱりひとつ前の電車に乗るべきだったんだよ!これじゃ難民みたいだ!難民!難民!と叫びながら中年の女の人がデッキを駆け抜けていき、その後ろを中学生くらいの男の子が「難民でもなんでもねえよ!」と怒りながらついていくのを、家に帰る長距離列車の中で見かけた。席が見つからないのだな、と思いながら紙パックのお茶を飲んでいた。帰宅ラッシュの列車は超満員で、グリーン席にも指定席にも、自由席にも空きはなかった。そして私も席は見つけられないのでした。
 車両と車両のあいだの、デッキのところで、大きなかばんの上に座ってうとうとしていた。車掌さん来たら怒られちゃうかなあと思いながら窓を見上げた。空がすらすら去っていった。その直下にはもうずっと海があるはずだったけれど、立ち上がるのが億劫で私は、海の真上にあるはずの曇ってて濁ってる灰汁みたな空に海の分までぜんぶ託して眺めていた。いつのまにか眠っていた。
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