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 猫が本棚の上に座り込んでにゃあにゃあいってたから背伸びして抱き上げてどんなもんだーってふにふに揉んで鼻と鼻をくっつけた。わたし背が伸びてよかったあとようやく思った。

***

 アイスクリームにスプーンを突き刺してカップの縁にぎゅっと押し付けながら、こんな風になりたかったのだと思った。できることならスプーンを突き刺して心の内側をぎゅっとひっかきたかった。輪郭に沿うように。
 漠然と、あんまり、迷惑をかけちゃならないなと思った。自棄になれるほど甘えられるものなんて、見つける前から腐っていく。腐臭のなかで生きるけど、それはそれなりにうんざりするよ。世界はとても敵だ。私は戦わなくちゃならない。なんちゃって。だけど世界は友達でもないし、恋人でもない。兄弟でもないし、お互いに、かわいらしくさえないよ。私はたとえば雨に焼けたベンチに座って、ささくれた木をなぞる瞬間なんかにそのことを思う。そして感謝のために眩暈する。感謝のためにかなしさが降りてきて、感謝のためにまばたきを忘れる。よそよそしさだけが私たちの友情だった。人生になんか触れられなくてもよかった。なににも再会できなくてよかった。生まれる前にあったものが、完全な無欠さだったのだとしても。たとえ部屋の中に一トンの泥が注がれ、溺れて、破滅しても、窓の向こうの夕焼けはうつくしくすすみ、飛んでいく鳥は泥の飛沫よりずっとうつくしいという、約束に、私は何度だって頭を下げた。そうまでも、ありがとう、どうも、ありがとうね。辿り着かなくていいのなら、どんな光も愛せる気がした。
 信頼をしあわないよう、遠いところで食事をしよう。傷つけるタイミングをはかりあうように直面したい。アイスクリームにスプーンを突き刺して円周にこすりつけるみたいな心の動きですれ違いたい。摩擦の予感だけで胸がいっぱいになって苦しくなる。苦しくってしかたがなくなる。嬉しくって泣きたくなる。吐きたくなる。指先までじんじんする。強烈な斥力を抱え込んでそれでも熱烈に世界と求め合うように見えるひとたちが好きだった。壊れそうな力で近づいていくスピードにいつだって感動した。牛が大地に血をこすりつけるような風景にからだぜんぶが震えた。だから世界も歴史も人生もいらない。なんにもいらない。なんにもいらない速さで突き放される速度と殺しあいたい。いつも壊れる直前であれるように、近づく前に離れていけるように、真面目にもなれるように。
 世界にくるまれていたいのではなかった。無音できつくこすれあって、左半身から削れていきたかった。私はだから憎しみあいたいということなのだと思う。強く別々に輪郭と輪郭で憎しみあいたいということなのだと思う。そして私はその構造のはじっこを、ベンチの裏のささくれを、撫でて、おかしくなるほど息をはいて、嬉しくて苦しくてうなだれて夢じゃないのだってだけ思う。ささくれはささくれで、世界なんてどこにあるという。そんな風に嗚咽してそんな風に吐瀉する。甘い腐臭から遠ざかれるように。暴力に憧れる乳牛が、短い草の上を歩き出してもう帰らない。そんな物語が肺から息をひっぱってくる。憎しみあって、削れるなかで、摩擦の表皮の甘い一ミリを泣きながら齧れたら、いいのに。

***

 日が暮れるのが、果実が腐り落ちるみたいだって言ったひとがいた。その瞬間世界は腐れて醸造されてアルコールになるのだって。だから私たちは酔っ払いなのだって。それはあんまり爽やかすぎるよって私たちは笑った。日の出は世界の瞳孔がひらいてゆく様だと、死んだ世界を愛撫するから私たちは変態なのだと、そんな話でへらへら笑った。変態が気取ってどうすんだよって笑った。
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