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 受ける試験をぜんぶ受け終わったあと、おともだちが「映画借りてきたからおいで」と言うのでおともだちの家にご機嫌で行った。ゴッドファーザー1とゴッドファーザー2とゴッドファーザー3を観た。映画借りてきたって、まさかぜんぶゴッドファーザーとは思わなかった。
 ゴッドファーザーを観終わったあと近くの24時間営業のファミレスに行って夕食を食べた。おともだちはファミレスの白いテーブルに突っ伏して、「うー」とか「あー」とか「うあー」とか呻いていた。それから、「深夜のファミレスに子供を連れてくるなんてけしからんな、まったくけしからん」とぶつぶつ言っていた。周りを見たけれども子供なんていなかった。「子供って私のこと」とおともだちが言ったので聞かなかったふりをした。私がもしも子供を産んだらさ、とりあえず私を殴ってちょうだいよ、痛いのを忘れちゃ子供なんて育てられませんわよ、とおともだちが言っていた。なんだか一瞬、せかいじゅう、みんなみんな、子供のことを考えすぎているような気がして、おかしかった。私はにやにやしておともだちの手のひらをつねりながら、痛い?って聞きながら、馬鹿だなあと思っていた。
 夜中の2時を過ぎたら、もうファミレスの客はだいたい固定されていて、電車ももうないし、あんまり入ってくる客も出て行く客もいなくて、店員さんも厨房の入り口でおしゃべりしているし、窓の外は真っ暗だけど晴れているし、私は、恨めしいのは地球が広すぎることよ、と思いながら、おともだちの鼻歌を聴いていて、馬鹿って私よ、と思いながら、とりあえずなんだか気持ちが良く、何回も白いテーブルを撫でていた。

***
 
 一通の手紙を書いた。私は、手紙を書くのが下手だから、生まれて七年目くらいに手紙を書くのをやめてしまって、だから、ほんとうに久しぶりに書いた手紙だった。その手紙は返信だった。一ヶ月机の上に置いておいたあと、封を切ってからもう一ヶ月放っておいた手紙の返信だった。書き終えたそれを読み返しながら、きっと返事は遅すぎたろうと思った。手紙はいつだって遅すぎて、思い出のために送られてくる。手紙を折って封筒に詰めてしまえば、もう私は私の書いた手紙のことなんて忘れてしまうのだけど、それがどこかのだれかに届いてしまうなんておそろしい。本当は、おそろしくて、おそろしすぎるから、手紙なんか書きたくなかった。その手紙は他愛もないものだったけれど、いつか人を殴るかもしれないもので、だからあの四角い封筒の中に私が入れたのは画鋲だった。画鋲は文房具だから、人を刺すためのものじゃないはずだから、って私はぶつぶつ自分に言ってあげて、そういう針を送りつけるんだ。その手紙は他愛もないものだったけれど、配達途中に風で飛ばされてしまったり、海に沈んでしまったりしたら、私は途方に暮れてしまうだろうものだったし、同封した、だれかの目から見たら、もしかして悪意は、私の私に対する愛だった。それをひとに送りつける私は、ロバみたいに間抜けだ。間抜けなことを平気な顔してできるくらい、私は頭の回転が遅いから、いつか運ばれてくる私の私に対する暴力をなんとなく感じながら手紙をポストに投函した。暴力でなくて、きっとそれは恍惚だろうと思って、ポストの前に突っ立って、言い訳を十個考えて、そのうち半分は捨ててしまって、残りの半分を大切に鞄にしまった。それは枯葉だった。赤くてぴかぴか光るポストの前で、私は黙って枯葉を食んでいた。美味しいと思うくらい、私は頭の回転が遅かった。
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