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 雨降りを期待していつもカーテンを開けていた。雨が降り出せば、それを忌々しく思うことに専念した。私は雨が好きだった。嫌いになるためだった。空からだらだらと水が落ちてくるのは、なんて忌々しいんだろう。湿気がひどいじゃないか、洗濯物も、乾かないじゃないか、眠る直前まで音が聞こえる。そういうところは好きだよ。好きになるために嫌いなものがあるだろうかと探して眠った。思いつかなかった。とても、とても足先が冷たい夜に、なにが必要なのかと思った。この飽和した部屋にいったい何がいるっていうんだろう。もうなにも欲しくないと言ってみた。もうなにひとつ増えないでいいと、なにももたらされなくていいと、わっかの端を閉じてしまおうと、そしてそれは嘘だった。私のあいするこの夢のように汚らしい部屋。その天井。私のこの夢のように汚らしい希望。
 夜中にコンビニまで歩く途中、しゃがみこんで両手を道路に押しつけた。硬く冷たかった。そしてどこまでも続く道路は大きかった。大きすぎて死んでしまいそうだった。だれも、人も車も通りかからなかった。私は道路のキメの荒さを凝視していた。たぶん、頭上には星があるだろうと思った。いま翻って空を見れば、きっと星の光は画鋲のように辺りに撒かれ、うるさげに懐かしく光っていることだろうと思った。私は道路に押しつけた手になにを期待したんだろう。脈動のないこのアスファルト、私の脳みそは、プラスチックのようにつるつると、うつくしくもなくたわんで、しゃがみこんでいたら足が痛くなって、私はコンビニに歩いた。コンビニはいつもみたいに眩しかった。眩しすぎて目がつぶれてしまいそうだった。目がつぶれて私はもう星なんて見れなかった。蛍光灯に脳みそをぶん殴られていた。いつも、怖いのは、蛍光灯の光だ。怖くないものを感じられないだけかもしれなかった。私の視力はいつだって弱く、だから世界中の人が優しさでもって蛍光灯で辺りを照らしてくれているのかもしれない。私は使い終わって捨てられた長い蛍光灯を振り回して世界中の蛍光灯を割って歩きたい。薄暗くしてしまいたい。急に暗くなった世の中に怯える子供たちの泣き声を聞きながら、私は道路に転がって、アスファルトに頭を押しつけて自分の脈拍を感じたい。私は蛍光灯のひとつも壊せない。私はずっと蛍光灯のひとつも壊さないだろう。子供たちの泣き声が怖いからじゃなかった。星が見えないからだった。私の秘密はきっと嘘なんだろう。私の奥歯に眠る秘密は嘘だろう。私はすやすやと眠った。私の秘密は一匹の羽虫だった。その羽虫は石のような色をしていてそれが好きだった。だれかにも私の羽虫を好きになってもらいたい、すこしだけ。それで、することといったら、道路にてのひらを押しつけるくらいだ。この道路の先端に眠っているひとがいる。おやすみなさい。おやすみなさい、このてのひらが、なににも触れないことを知っている。どうか不意の物音で、起きてしまいませんように。どこかのだれかが、どうか、猫のいたずらかなにかで、変な時間に起きてしまいませんように。午前三時に真っ暗い部屋で途方に暮れませんように。朝になってそこらじゅうがとても明るくなるまで、そのひとが目を覚まさないでいますように。おやすみなさい。私は道路におやすみなさいと言っていた。道路だった。頭上にはきっと星があったろうと思う。雲の向こう側にでも。いつだって理由はよくわからない。でも私が空を見ていないときだって、朝だって、いつだって星はあるらしいよと宣伝していたのは、大人のひとだった。どうも、ありがとう。私は後頭部に星の光を浴びている。その光はとてもがらくたで、ささやかで、善悪を知らない、嘘だった。私の愛する嘘だった。
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