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 退屈さのあまり街を行ったり来たりしていたら、「バイトしませんか、ふつうのカフェなんですけど」って男のひとが言うので、「むむむ、なんてあやしいんだ!」って思いながらついていったらふつうのカフェだった。よかった。なにがふつうって、時給がふつうだった。たぶん、私があんまり暇そうだから、かわいそうにと思ってくれたんだと思う。私は、暇なことは、かわいそうじゃないよって言いたかったのだけど、あした履歴書持ってきますって言った。だって、バイト、見つけなきゃ、ならなかったのだし。ああ、アルバイト、したくないな。わたし毛布の上で寝返りするのが好きだな。毛布の上で寝返りするアルバイトがあればいいのにな。そんなアルバイトがあったら時給なんて400円とかでもいいのにな。すごく手際よく毛布の上で寝返りがうてるのにな。自信があるのにな。のにな。

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 きょう、ともだちの大学でごはんを食べて、ついでによくわからない講義に出て本を読んでいたら、いきなりせんせいに当てられたのでびっくりした。いまこのしゅんかん寿命でしにたい、と思った。ともだちが横でちいさく「上下です!」って言ったから私は目をぽかんとあけて「上下です」って言った。そうしたらせんせいは頷いてくださって、講義は進行した。あれはいったいなんのお話を聞く時間だったんだろう。上下です。だって。上でも下でもないんだよ。上下なんだ。

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 マネ展に行った。自殺という絵の、シーツにのった光はちゃんと残酷だったと思う。ひとの耳の裏、ひとの瞼、ひじの裏、に射す影は、やわらかで、まるくて、その影の下に白い肌があるとわかった。「ベルト・モリゾの黒色はすごいぞ!」って聞いていたけれど、ベルト・モリゾの黒色はすごかった。黒の下に肩があったし黒の下に胸があったけれど急に黒は無限みたいになって触ったらどこかに突き抜けていきそうになっていて、そういう有限と無限のグラデーションみたいなのが、なんだか、きれいだった。
 最終日だったのでレンピッカ展にも行った。レンピッカはかっこいいひとだった。黒いベールをつけたレンピッカなんて。もう。レンピッカは女の人のドレスと白い花をおんなじ素材に描いていたように見えた。レンピッカの世界はつやつや輝く安定した不安定だった。レンピッカはきれいなひとだった。自分がきれいと知っているひとのとってもきれいなきれいだった。

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 たとえば目を閉じる速度でと言ったとき私が想像したのは夕暮れの遅さで、彼女が想像したのは光の速さだった。
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