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  大学のシステムがなんだかよくわからないので履修登録とかなんだかうまくできないのでたいへん、困っている。なにげない顔で事務のひとに履修登録ってどうやるんでしたっけって聞いたら、「え、登録期間終わりましたけど」って言われた。それは、知っていた。もうだめですかって聞いたら、だめでしょうねって言われて、だめなのかって思って、しょげた。でも私は諦めないで、ヘラクレスみたいに強気に、「履修登録の修正期間ってありますよね」って言った。事務のおねえさんは、ありますよって言って、その日付を教えてくれた。メモをとる私におねえさんは「履修登録のしかた、わかりますよね」と言ったから、私はカブトムシの前足みたいに弱気になっちゃって、「わかりません」って言った。おねえさんはやさしく履修登録のしかたを教えてくれた。いっしょに昼ごはんを食べに行きたいくらいのやさしさだった。私はおねえさんが教えてくれたことをメモして、またわからないことがあったら来ますって笑って、おねえさんは真顔みたいな顔で、「しっかりしてください」って言った。しっかりしようと思った。

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 金曜、映画を観に渋谷に行ったら、連休の前日だったから、おそろしいほどひとがたくさんいた。ひとびとがうにょりうにょり真剣に歩き回っているので、私も歩き回らなきゃあと思って、うにょりうにょり歩いていたら、方向がなんにもわからなくなって、映画館がわからなくなって、パレードみたいな往来で、石畳を数えて、後ろを歩くおんなのひとが、「ああいう情けないやつはだめだね。ぜんぜんだめ」って言うのを聞いていた。行進は情けないだれかに背を向けていて、行列のなかで私たちは50センチずつ歩いていた。
 それでもなんとか映画館に着いた。買ったチケットを持っていた本に挟んで保管していたらなぜだか見つからなくなっちゃって、一枚一枚ページを繰って、でも見つからなくて、「食べられた!」って焦っていたら映画館のおねえさんが「どうぞ」って言って入れてくれた。やさしい。おねえさんというのはなんてやさしい生き物なんだと思って、私にやさしくしてくれるおねえさんはもしかしてみんな同一人物で、私を見守ってくれてる精霊さんなんじゃないかと思ったけど、そんなはずはなかった。たばこをポイ捨てしたって、ちょうちょの羽をむしっていたって、チケットを探しているときにどうぞって言ってくれたら、とってもすきだから、みんなチケットを探しているひとにどうぞって言ったり言うふりをすればいいと思った。でも映画館の数には限りがあって、みんな映画館ではたらいていなかったし、みんな映画を観る為に歩いていなかったし、だれもチケットを探していなかったし、それはむりだった。だから世界中が映画館の待合室になればいいと思って、みんな天国を見に行こうとして、チケットがないなら、宗教が生まれるぞって、どうでもいいこと考えてたら、上映開始5分前にコンタクトがずれて、もうほんとうに慌てて直しに行って、映画を観るってそれだけのことがどうしてこんなにうまくいかないのって、ちょっと情けなくて、おかしかった。

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 「うちの屋根に白鳥がとまってるんだよ。ほんとにたいへん」と言うのでお友達のおうちに行ったら屋根はふつうに温和そうな屋根だった。白鳥いないねって言ったら「え、いないよ」って言われてびっくりした。「嘘?」って聞いたら「え、なにが?」ってびっくりされて、「白鳥が?」ってびっくりされて、だから私はもうなんにも言わなかった。なんにも言わなかったのに、「白鳥がいると思ったの?」ってなおも言うから、私は首をぐるんぐるん回してなにがなんだかわからないふりをした。だって。でもべつに白鳥を見るために来たわけでもないのでそれはよかった。
 お腹が空いたのでそれを訴えたら、お友達は私を家にあげて、木の実を食べさせてくれた。木の実は細長いビニールの袋にぎゅうぎゅう詰まっていて、おつまみ用かなって思った。私は深緑のソファの上で膝を抱えて、ポリポリ木の実を齧っていた。木の実がおいしかったのと、炭水化物が食べたくてしょうがなかったので、うめいていたら、お友達は炭水化物をくれた。昨日作ったんだけどって言ってチーズケーキも食べさせてくれた。おいしかった。世界のひとが世界の王様を決めるときには彼女を推そうと思った。それはチーズケーキがおいしかったからではなくて、白鳥みたいな王冠が似合うだろうと思ったからだった。王様には王冠が似合うほうがいい。似合わないよりかは。チーズケーキをつくるのだって、へたなより、うまいほうがいい。嘘をつくのだってうまいほうがいい。騙されたひとはチーズケーキを食べればいい。そんなことでいいならそんなことでいい。どちらかというと。いつも。
 お友達のおうちの玄関をでてすぐのところに街灯があった。虫がいっぱいだった。お友達は、虫がいっぱいなのを見上げて、月だーって言った。私も虫がいっぱいなのを見上げて、月だねって言った。ようく見たら、街灯の向こう側に月があった。私は、虫がいっぱいだねって言った。
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