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 私たちは、むかしむかし、あなたの特技はなにかしらと聞かれる中で、「世界で一番にはなれないじゃない」と、思った。

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 勝ちたいとか、そういう感情がわからないわけじゃないと思う。私はプライドが高いと思う。だけど辛いことにがんがん挑戦して乗り越えてやりきって幸せになりたいと言う人がやっぱりなんとなく、わからなくて、「最初からやらなければいいのになあ」と思う。

 「私はプライドが高いと思う」と言われた。「いろんなことで人に褒められた、だからいろんなものが好きだった。勝てるから勝ちたいと思った、私は勝てるから勝負しているだけで、勝負が楽しいわけじゃない」と言っていた。「私は勝ちたいと思わないけれど、なぜだろう」と言った。「自信があるんだろ」と言われた。「なにかに自信があるんだろ」と言われた。あーあ、と思った。私は人よりたくさんものを思うだろうか。私は人をたくさん、見下しているだろうか。みんなみんなに、なにかそういうものが必要なのだとしたら、私が持っているものはなんて薄汚いんだろうと思った。「また負けちゃったよ」って笑ってる私は、ほんとうにくだらないものを撫で回している、じょおうさまだね。土に溶けてる汚い雪の、女王さまだね。
 だけど「こんなのはずれくじだな」と思ったらやっぱり笑っちゃった。やっぱり私はそうみたい。
 私はナルシストであなたもナルシストだ、あなたはいつもなにかに勝っているし、私は自分が大好きだからだいじょうぶ。ねえ30位のひとはいったいどうしているんだと思う、という話題になった。
 むかし、先輩とのいざこざで部活を辞めてしまった男の子がいた。「だれかに必要とされたい」と私に言った。彼は風俗に行くのがやめられないと言った。彼は、小さいころから、運動神経が良く、人に求められて、だけどそれがなくなったので、とっても悲しくなってしまったのでした。「野球をしないなら誰も僕を必要としてくれない。つらくてたまらないよ」、私はもうずっと野球なんてできない。チームメイトがキャプテンを頼るような眼差しを向けられたことなんてないと思う。
 私はあのときあの男の子になんて言ったっけ。私はなにか謝った。ばかみたいに謝ったよ。ばかみたいだね。私にはとてもわからなかった。「野球をするしか必要とされる術がない」と言うひとがわからなかった。私には野球なんてない。きっとたくさんの人がそうなんじゃないかなあ。あなたが必要とされてきたような形で、人に必要とされてきた人がいったいどれほどいるんだろう。報われない努力をした男の子がここにどれくらいいるんだろう。私はなぜ耐えられるんだろう、あの子はなんでこんなに耐えているのだろう、なんであなたが、いまさら、そんなことを言うんだろう。わからなくて、私は、いつもほんとうに誰かのことがなんにもわからないよと思って、苦笑いしていたのでした。電話のこっちで私はどうしようと思って苦笑いしてかなしかった。
 ねえいつも30位のひとはいったいどうしているんだと思う、という話題になって、「さっぱり、わからない」と勝ってる彼女が言った。「私はずるいと思う。得意なことだけ好きになっているだけだから。それで偶然なんでもできるような顔をしているだけだから。努力して勝ち得たような顔をしているだけだから」と彼女は言ったけど、彼女はちっともずるくなんかないと思う。私が、野球が上手な男の子を思い出している間に、「だれもそんなこと心配してほしくないだろうさ」って彼女が言ってそんな話題はどこかに消えた。私たちはメンマをつついていた。「たけのこってこんなに柔らかくなるのすごいね」という話をした。「油が柔らかくするの?叩いたりするの?」とか言っていた。

 別れ際、彼女は「ありがとう」「楽になった」みたいなことを言った。おはなしをすると息が苦しくなるのは私だけなんだろうか。私はずいぶんおしゃべりになった。それはもううるさいくらいで、私は私にしょんぼりしちゃうけど、おしゃべりのあとに「ありがとう」とか言う人がいる。どうもありがとう。
(結局なんの相談にも乗れなかったのだけど。)
(なんだかごめん。なんだかメンマおごらせた。)
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