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私は私としてあなたを愛し平和を乞い敵を憎み血の夢を見ている。私はひとつの点であって私は私のひとつの愛と私のひとつの傷のほかに私の体を持たない。そんなことってばかばからしいくらい快楽なので気色悪くもなるのだ。
「私は全世界に傷つけられた」って私を睨んで泣いている女の子に私はキャラメルを渡して優しく言ってあげるんだ。あなたを傷つけたのはあなたの敵だ。私を傷つけたのは私の敵だ。私の愛は私のもので、世界は私を所有しない。彼女はこのクズって言って私をくびり殺すだろう。私が願うのは彼女の腕力だ。どうか許さないでくれよと思う。鳥が空の高いところを風に流されながら飛んでいって、横断歩道を親子が渡っていって、車が親しげに左折を待っていて、喜びがたまらなくてだれかに許さないでほしかったのだ。夢のなかの草原で寛容さが虫を潰しているのを見たのだ。心臓から体にむかって冷たいものがどくどく打たれていた。私は、私のしなかったことの、なにもかもでない。あなたはあなたの見なかったもののなにもかもでないだろう。私が私でしかあれないなら私は私を蔑みたくだってなる。私がチョコレイトケーキにさっくりフォークを刺した瞬間にだれかにさっくり恋人を刺されたひとが、十年後に横断歩道の向こう側で私を睨んでいた。私はそれを眺めていた。信号が煌々と赤く光る新月の夜だった。映画の場面を真似たようなまばたきをした。信号はいつか青になって私はあのひとが手に持つ包丁でさっくり刺されるのだ。冬の新月の夜に。私が願うのは彼女の腕力だ。そして許されていた。憎まれてさえいないのだった。なぜなら私に関係はなかった。願うのは私だった。ねだっているのはいつも私だった。彼と彼女に。父と母に。地図と映像に。恋人と恋人に。横断歩道の前に立って、信号の青を本当に待つような瞬間を待つ。「彼女はこのクズって泣いて私をくびり殺すだろう」。願うのは彼女の腕力だ。豚のような希望だ。そしていつも彼女の腕は青白く細かった。紺色の脈がうっすら手首に浮いていて魂の色を思わせた。
冷たい信号機に額をこすりつけるような冬の新月の夜には発砲がしたいし、誰かの発砲に死にたい。なにがどこまで嘘だったって、死んだふりくらいしていたい。愛の言葉はあるだろうか。凍えた街で突然に信じるような。過去についての百の質問に惰性でこたえる午後を過ぎ、あるのは静かな街だった。平和を愛する夜だった。
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私はひとりきりで、胸が痛いほど幸せだったから、世界に恋していた。私はからっぽだった。世界は浅瀬だった。現実は、シリアスなのかな。コミカルなのかな。とらじかるなのかな。笑っちゃえるのかな。それとも泣けるのかな。
そんなものは、どちらでもないに決まっているけれど、現実がシリアスかどうかだなんて、倒錯だけれど、だけど私はそれがもしわかったら、どちらかだったら、いいのにと思う。私はすぐにシリアスさから逃げ出すし、真剣すぎる話なんかいっこも真面目に聞きたくないから、もしも、もしも現実が深刻なものなのだとして、現実が切羽つまったものだとして、殺し合いや、生かし合いや、愛し合いなのだとしたら、私はずっとただの、逃亡者だなって思うよ。
すぐにすべて失くしたい。
あんたは、逃げているだけの卑怯者で、臆病者にも劣る臆病者で、自己愛でできた怪物で、あんたが軽蔑したすべての人間を、あんたは軽蔑する権利を持たなかったと、言われたことがあった。とても、ひどいことを言うんだなって思った。私が卑怯者で臆病者で、そして醜くて、それのなにが悪いのと思った。そして誰かがもしも、悪くはないよって言ってくれたとして、そのあとに繋ぐ言葉を見つけられないから、どうしても私に意味はなかった。意味で生きているわけではない私はそれでもやっぱり悲しいと思う。悲しさをぐじゅぐじゅ口の中でやわらかくなってもまだ噛み続けて、口淋しくないのを喜んでいる。
ゾンビみたいだな。ぼくひとり不死身だ、ぜ。ぼくひとりのゲームだぜ。たのしくて、怖いよ。
怖いよう。
そして外はあかるい。なにしているんだろうって泣いたって、やっぱり生活はたのしい。頭が動かない。もしも、生活がとても、真剣なものなのだったとしたら、私は裏切り者でもいいなって。
朝になるといつも肺の底に小さな海があって、とぷとぷ揺れるから、悲しいのじゃないかと勘違いしながらいた。そこに喪失感の餌を投げ続けて、不気味さを延命しながらいた。
シリアスのない夏に生まれた。私はだれの存在さえ認めないのだな。私は私の世界の王様で、神様で、そうしてしあわせで、私はそれでいいに決まっているけれど、だけどときどき恥ずかしくて、消えてしまいたいな。
一日中なにもしないでベッドに寝転がってそんなことばかり考えていて、洗濯物がひゅうひゅう揺れているのをじっと見ていて、だけど笑い出しちゃうよね。どうにかなるときは、どうにかなるだろうとか、思うよね。どうにもならなければ、それだけだな、とか思ってね、洗濯物を取り込み始めるんだよ。不幸なふりも夜になったら続かなくて、ひとつでも多くの最低な言葉を探している。
どんな夜であっても、面白いこともないくせに笑えるなら、私はひどい人間だなって、やっぱり、思うよ。私はどこにもいたくないな。ひとつの現象になりたかったな。だれも私を一秒前と地続きと考えないような。私がいて、私以外のものが目の前にひとつひとつ面倒くさそうに置いてあるだけのこの場所で、私は幸せでいること以外をこんなにも知らない。しあわせにうちひしがれて、終わってしまうばかりだな。どうしてそんなふうに、明日や明後日を信じるのだろう。私にはなにもみえない。
爆破されて、車でぺしゃんこにされても、その1ページあとに生き返っている漫画を奇跡と思わないから、私はひとが傷つく瞬間をわからないし、ひとがなにに喜ぶのかもわからないし、ひとがどうして死んだのかわからないし、ひとがどうやって生きているのかもわからない。真似して泣いてる、ぼくはゾンビみたいだな。
この地平がどこかやだれかに繋がっているという物理的な現実だけしか私を正気にしてくれないなら、私はほんとうに一度死んでみたらいいと思った。そして1ページあとに生えてこなかった首を見ながら、笑えばいいと思った。
私が一番、頭すかすかだから、いやになるな。みんなの頭にはぎゅうぎゅうと、きちんと、詰まっているのかな。私のあたまがすかすかだから、ちょっぴり、怖くなるな。怖いよ。震えがとまんないよ。
なんて、なんて、なんてね。
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 階段を昇っていると、急に次の一歩が踏み出せなくなるときがあって、持ち上げた片足が宙ぶらりんで着地点を探している。私の踏もうとした次の一段は尊いはずの一段だったし、私の踏んだ一段は駅の改札に続く石くれだった。レとファとラが出ないような違和感と、代用のフラットの不協和音で、私のオルガンが鳴っていた。一階ずつ止まるエレベーターみたいに、大切にしたかった。思考と思考のあいだにマシュマロを詰めたかった。口の中を歯でいっぱいにしたかった。右手の小指を引っ張ると赤いランプが点いて、左手の親指を引っ張ると首がぐるんと回った。スイッチはふたつきりだった。私は、そのあいだの名前もない空白が、いなくなった次の一段が、私を見離しているのだって思い当たって、悲しかった。悲しかったけれど、私はだって、改札に行かなくちゃいけないのだから、階段は昇るためにあった。私は見離されているのだと思った。呆れられているのだと思った。小指と親指を交互に引っ張って大笑いしてる猿のおもちゃみたいなにんげんだから、呆れられているのだと思った。私の踏みたい次の一段に、私の足の裏側が探した一段に。でも、どう考えたって、駅の階段の次の一段は駅の階段なんだよ。ばかだな。駅の階段に見離されたら今より困っちゃうくせに、ばかだな。
 目の前を泳ぐ魚を見ながら、魚が泳ぐということについて考えたいんじゃなかった。水槽に十本の指を圧し付けて、その十本の指の十しかない文字で挨拶したかった。魚に。明かりの乏しい部屋の隅っこで、水槽に十本指を圧し付けて、魚を見て、会話を望んで、それで、私は他のなにもかもに目もくれず、答えを待ちたかった。部屋の外では何度も朝が来て、秋や冬が来て、車は空だって飛ぶようになって、貧困も紛争も消え去って、それで、まだ私は骨が浮かび上がった両手で部屋の隅で魚の水槽に指を圧し付けていたかった。それを勲章にしたかった。もうずっと、魚、きみのことを考えている。たった十文字伝えるために。たった五文字の返事が欲しいだけで。そうやっていつか、誇らしく言いたかった。私は魚のことを考えられる人間なのですって。豆電球みたいに単細胞だけど、目の前のもののためにだけのものになれるって。一グラムの普遍性も持たない、魚のための骨になれるって。でも、だから、魚だってなんだってよかった。机の上で腐った魚の切り身だってよかった。その隣のシャーペンでも。その隣のホチキスでも。神様なんて文房具だった。魚の切り身だった。水槽の中の冷たい魚だった。水槽は冷たくて、指先はいつも冷たくて、私は魚は魚であると知っていたし、私はけっして魚のための私になんてなれないことも知っていた。視界はだっていつもとても明瞭だった。水槽の下の畳のささくれだっていつもはっきり見えた。壁の染みだって、日に反射する埃だって見えた。だから私は魚のための私じゃなかった。私は私のために小指と親指を交互に引っ張る猿のおもちゃだった。それでも目の前にいるあなたのことを考えたかった。魚のことさえ考えられない私はだけどだれかについてだれかのために歌いたかった。役立たずの薬指を証明したかった。あるはずの次の一段を探したかった。私は信じていた、信じてる、天国と閻魔さまとエルドラドくらいには信じてる。後ろから刺してほしい。ぎざぎざした包丁で。それで私は振り向いて、あなたを憎みたい。それだからあなたをだいすきって言って。ばか。刺されたくなんかない。ばか。だいきらい。皮膚と皮膚できちんといたい。皮膚と水槽、皮膚と太陽。私が、針を刺したらゴムの塊になるような、風船みたいな、ものならよかった。血を願ってる、ばかだから、完結した指先を慈しめるような、風船だったらよかった。紐を離してしまった子供が見上げる先で、おそろしいスピードで高度を増す非情な風船。子供の黒い目を手離して、さようならおだいじにって挨拶して、空を見上げた無表情の子供と、お互いを手離して、別々の、神様とわたしはべつべつの人間になりたい。さようならおだいじに。冷えた指先を舐める。挨拶の仕方をいつも間違えた。挨拶をするための弱視だった。私はもう信じていない、信じていない、のだと思うな。会えなかったすべてのもの、言えなかったすべての十文字の、墓標に、この指の一本をあげる。右手の小指をあげる。赤いランプは追悼のランプになるだろう。だからさようなら。おだいじに。お互いが死んだって構わないから、わたしたちはおだいじにと言うことができた。
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 雨降りを期待していつもカーテンを開けていた。雨が降り出せば、それを忌々しく思うことに専念した。私は雨が好きだった。嫌いになるためだった。空からだらだらと水が落ちてくるのは、なんて忌々しいんだろう。湿気がひどいじゃないか、洗濯物も、乾かないじゃないか、眠る直前まで音が聞こえる。そういうところは好きだよ。好きになるために嫌いなものがあるだろうかと探して眠った。思いつかなかった。とても、とても足先が冷たい夜に、なにが必要なのかと思った。この飽和した部屋にいったい何がいるっていうんだろう。もうなにも欲しくないと言ってみた。もうなにひとつ増えないでいいと、なにももたらされなくていいと、わっかの端を閉じてしまおうと、そしてそれは嘘だった。私のあいするこの夢のように汚らしい部屋。その天井。私のこの夢のように汚らしい希望。
 夜中にコンビニまで歩く途中、しゃがみこんで両手を道路に押しつけた。硬く冷たかった。そしてどこまでも続く道路は大きかった。大きすぎて死んでしまいそうだった。だれも、人も車も通りかからなかった。私は道路のキメの荒さを凝視していた。たぶん、頭上には星があるだろうと思った。いま翻って空を見れば、きっと星の光は画鋲のように辺りに撒かれ、うるさげに懐かしく光っていることだろうと思った。私は道路に押しつけた手になにを期待したんだろう。脈動のないこのアスファルト、私の脳みそは、プラスチックのようにつるつると、うつくしくもなくたわんで、しゃがみこんでいたら足が痛くなって、私はコンビニに歩いた。コンビニはいつもみたいに眩しかった。眩しすぎて目がつぶれてしまいそうだった。目がつぶれて私はもう星なんて見れなかった。蛍光灯に脳みそをぶん殴られていた。いつも、怖いのは、蛍光灯の光だ。怖くないものを感じられないだけかもしれなかった。私の視力はいつだって弱く、だから世界中の人が優しさでもって蛍光灯で辺りを照らしてくれているのかもしれない。私は使い終わって捨てられた長い蛍光灯を振り回して世界中の蛍光灯を割って歩きたい。薄暗くしてしまいたい。急に暗くなった世の中に怯える子供たちの泣き声を聞きながら、私は道路に転がって、アスファルトに頭を押しつけて自分の脈拍を感じたい。私は蛍光灯のひとつも壊せない。私はずっと蛍光灯のひとつも壊さないだろう。子供たちの泣き声が怖いからじゃなかった。星が見えないからだった。私の秘密はきっと嘘なんだろう。私の奥歯に眠る秘密は嘘だろう。私はすやすやと眠った。私の秘密は一匹の羽虫だった。その羽虫は石のような色をしていてそれが好きだった。だれかにも私の羽虫を好きになってもらいたい、すこしだけ。それで、することといったら、道路にてのひらを押しつけるくらいだ。この道路の先端に眠っているひとがいる。おやすみなさい。おやすみなさい、このてのひらが、なににも触れないことを知っている。どうか不意の物音で、起きてしまいませんように。どこかのだれかが、どうか、猫のいたずらかなにかで、変な時間に起きてしまいませんように。午前三時に真っ暗い部屋で途方に暮れませんように。朝になってそこらじゅうがとても明るくなるまで、そのひとが目を覚まさないでいますように。おやすみなさい。私は道路におやすみなさいと言っていた。道路だった。頭上にはきっと星があったろうと思う。雲の向こう側にでも。いつだって理由はよくわからない。でも私が空を見ていないときだって、朝だって、いつだって星はあるらしいよと宣伝していたのは、大人のひとだった。どうも、ありがとう。私は後頭部に星の光を浴びている。その光はとてもがらくたで、ささやかで、善悪を知らない、嘘だった。私の愛する嘘だった。
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ノンジャンル
降り終わった雪に死んだ日の話
2010-01-24-Sun トラックバック : 1  コメント : 0
 小学1年生のとき、母が、この子たくさん漢字が読めるのよ、とだれかに話しながら、そこらじゅうの漢字を指差しまくった。私はにこにこして「えび」とか「かも」とか言って、知らない女の人がすごいねぇと笑った。レストランだった。大きな窓の向こうを犬の散歩をする老人が歩いていって、私はそれを憎いと思って無性にいらいらしてストローを噛み潰した。「私こんなに隈のある子供はじめて見た」と私に言って笑った、児童館の綺麗なお姉さん、の綺麗な顔を思い出して笑うのは楽しかった。楽しくないのに体中の関節をねじって笑うのは頭が痛くなるほど気持ちが、悪かった。 
 私の背中や爪はガサガサととがっている気がしたので、私はなるべくズタズタに引き裂いてやろうと思って自分の喉を握って歩いていた。ナイフを隠しながら店に入るように、ズタズタにしてやろうと睨み付けて町を歩いていた。いつも足下は細く尖っていた。父が怖いと思った。兄を見ていた私は、きちんとして、勉強をしたり、微笑んだりして、そのくせいつだって間違ったやつをズタズタにしてやる気概で、電気を消した部屋で寝ないでいた。いつもみんな怖かった。私をひっかく気でいるなら、殴りつけてやると思っていた。嫌われたら嫌いになった。きらいだった。あの子もこの子も、父も、母も、玄関も、兄さんも、きらいだった。先生も、電柱も、汚い空も、校庭も、きらいだった。ズタズタになれと思った。兄は痛そうだった。兄は死ぬだろうと思った。きっといつかベランダから飛び降りるんだと思った。あのひと要領が悪いと思った。玄関に近付くすべての足音が怖かった。兄と私だけの静かな家に、ときどき聞こえるそれは怖かった。ほんとうは兄に後ろめたかった。だから嫌いだった。兄さんも私のことを憎んでるだろうと思った。私が兄さんのことを嫌いなのよりもずっとずっと真剣に兄さんは私のことを嫌いだと信じていた。
 
 兄さんが中学生になった、冬に、兄さんは私の部屋のドアをガシャンと開けて、「雪が降ってる!」と言った。私はベッドの中にいて、びっくりして声も出なかった。兄さんはずかずか私の部屋にはいってきてカーテンを開けた。寝坊した土曜だった。外は雪で白かった。私はいそいで、ほんとうだ、と言った。兄さんは笑っていた。「外に行く用事をつくらないと」と言って笑っていた。突拍子もない、と思った。
 この朝を忘れられないかもしれないと思って、兄さんが出ていったあと少しだけ泣いた。雪がきらきらして近所の子供の声が聞こえていた。兄さんはどうして雪が降ったら笑えるんだろうと思った。私はあの人が好きだと思った。好きだと思った。雪が好きな人は好きだと思った。私なんて消えてしまえと思った。だいすきだった。私はなにかをズタズタにできるようなものをなにも持っていなかったし、いつもなにもしなかったけれど、それでも一生懸命傷つけたものはあったし、傷ついたものはあったと思う。私の傷つけたものが好きだった。大嫌いだった。私は私が私だけを好きなのだと思っていた。それはそのとおりだった。でもさまざまなものを嫌いになる理由はさまざまに否定されもした。憎らしくってあいらしかった。剥がされて、抜け落ちてしまったような朝だった。雪の眩しさだけが明るい、薄暗い部屋で、毛布にくるまって、正方形の天井をみた。許されているんだろうかと思った。私は許されるだろうかと思った。昨日の続きを指の爪が今日も伸びていた。起き出したくなかった、もうずっと、この毛布の中にいて、ぐずぐすと屑になって砕け散ってつちくれのような星になりたかった。そのくらいこうふくだった。
 雪だった。世界には雪が降っただけだった。それは冬だったからだし、十ヶ月たてばまた冬はきた。特別でない朝だった。冬でなくてもよかった。雪でなくても。私が私でなくても。朝が朝でなくても。それは傷ではなかった。穴でもなく私は痛んでなかった。欠けることのない身体でいた。傷ついたことなんかなかった。逆さに吊るしあげることは、コンパスや、兎や、秘密を、逆さに吊るそうとすることは、お祈りではなかった。だから成就ではなかった。ただそのとき首を絞められただけだった。雪の影に座り込んで百年眠ったように体の先が冷たかった。私のからだが透明ならよかった。雪の光が貫通すればよかった。私の体は透けないけれどだいじょうぶだと思った。鈍い肌色だけれど、と思った。醜くてごめんなさい、どうにもきらきらしい窓の外だった。だれもいなかったけれど、それらがとても不自然ですきだった。なにかが不自然だった。それは遠く外で子供の笑い声が聞こえているからだった。私の眠っている間に外がもう昼になっていて、とっくに起き出した彼や彼女が雪を投げ合って遊んでいたからだった。もうすぐ正午だった。窓の外を見ていた。劇的でなく、私はやさしくもなれなかった。遅く起きた日の違和感だけが薄暗くほのあかるくあった。
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